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訴えてやる!大賞―本当にあった仰天裁判73 (ハヤカワ文庫NF)
ランディ カッシンガム

定価: ¥ 819
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発売日: 2006-07
発売元: 早川書房
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「訴訟社会アメリカ」の歪を検証
原題は"THE TRUE STELLA AWARDS"…邦題はちょっとした雑学系娯楽本のそれだが、中身は「訴訟社会アメリカ」の歪を検証し、正常な司法の場を取り返すための運動を訴えている実に真面目な本。
著者は、StellaAwards.comというサイトの運営者で、ステラとは米国で最も馬鹿げた民事訴訟として有名になった「マクドナルドのコーヒーを(自分で)こぼして火傷してマクドナルドを訴え、陪審が290万ドルもの損害賠償を認めた」という事件の主人公のおばあさんの名前だ。
米国にはこの手の噂がたくさんあるけれど、「本当の話」だけを厳選し、読者が告訴・判決の妥当性を検討できるように資料を整理しているのがこのサイトだとのこと。
とにかく、米国の訴訟コストがGDPに占める割合は、1980年の1.54%から現在2.33% 膨らんでいるという。GDPの2.33%が訴訟に消えるとは物凄いことで、通常の損害賠償(根拠を持って計算できる)の他に、精神的苦痛とか、懲罰的賠償金とか、根拠を示せ無いような数字を大企業にたたきつけて、一生楽して暮らせる大金をせしめようという輩が後を絶たない。
陪審員は、「大企業は余った金を持っているから」「自分のお金ではない」「もしかすると、自分ももらう側になる日が来るかもしれない」という理由で、これらの賠償金を簡単に認めてしまう、という害を抱えている。
しかし、社会的責任を名目にした「懲罰的賠償金」が訴えた個人の懐に入ることはおかしいし、数千人規模の集団訴訟などでは、弁護士だけが大金の弁護料を手にして原告一人一人には商品券程度しか渡らないなどの現実も有る。
そればかりか、「宝くじ」でも買うような気持ちで、(診断書の偽造などの) 嘘を付いても原告団に加わろうとする一般人もかなりの数に登る。
例えば「アスベスト集団訴訟」では、便乗した健康な人々までが保証金目当てに群がった為に被告企業が倒産してしまい、発病した人が本来の補償を受けられなくなってしまったなど。
そして、こうした過大な訴訟のコストが回りまわって、保険料の値上げや、商品価格の値上げ、医師の不足、企業の海外流出、本来迅速に取り上げられなければならないマトモな裁判の遅延など、米国に様々な損失を与えている。
ただで一生楽しようという一般人と、訴訟費用でボロ儲けしようという悪徳弁護士は増え続けているというわけだ。
注目しておきたいのは、陪審制度が悪用されていること。
「どうせ企業の金だ」「自分が貰える番が来るかも」と思っている陪審員が安易な判決を出しているのも問題だが、弁護士は、取り上げる問題に一番良い結果を出してくれる陪審員がいそうな州で訴訟を起こす、という自由まで持っている。
たとえば、日本企業トップのセクハラ事件なら、もっとも日本企業が嫌われている州に訴える。とか。
日本はチマチマした法律がたくさんあるので、米国ほど酷いことは起きにくい法体系だと思うが、陪審制度が正しく機能しない事がかなりの場合で起こることをこの本は報告しているわけで見過ごせない。
また、日本で小児科と産婦人科の医師が不足している原因に「訴訟リスクが高まっているから」という現実があるらしい。
重症の患者ほど死亡しやすいのは当たり前だが、患者の重症度と医師の「訴訟リスク」が連動するなら、緊急医療の現場で「たらいまわし」が起きるリスクもまた高まる。そして助かるものも助からないリスクが上がる。
避けたい悪循環だ。どうすればいい?
馬鹿な訴訟のおそろしい結果
1992年,当時79歳のステラ・リーベックは,マクドナルドで買ったコーヒーを自分の膝にこぼして,完治に2年を要する火傷を負った。ステラは,マクドナルドが「不当に危険」な商品を売ったとして損害賠償を求める訴えを提起した。陪審員は,ステラ自身の過失を20パーセント認めたが,懲罰的損害賠償も含め,290万ドルの支払をマクドナルドに命じた。
上記のマクドナルド訴訟は有名であるが,本質的に同じような馬鹿げた訴訟が数多くある。
例えば,シーザー・バーバー(56歳)。身長175センチ,体重122キロの彼がここまで太ったのは,週に4・5回,様々な全国チェーンのレストランでファストフードを食べた結果だという。バーバーは2回の心臓発作を起こし,糖尿病にかかりながらも,ファストフードの危険性に気付かなかった。レストランがバーバーにその危険性を説明しなかったのがいけないのだというのである。
アメリカでは商品の警告表示が不十分だったという理由で訴訟が提起されるので,馬鹿げた警告表示が少なくないという。
例えば,「注意:燃える恐れがあります」――暖炉用の薪
こうした馬鹿げた訴訟は,単に関係者の失笑を買うだけの罪のないものではない。
大企業が「被害者」に支払う賠償金は,その分だけ商品の価格に跳ね返る。保険から賠償金が支払われるとしても,馬鹿な訴訟の頻発(及び非常識な金額の支払命令)は保険料の高騰を招き,それは結局価格転嫁によって各消費者の負担となるのである。
一笑いした後は,損害賠償訴訟の持つ本質的な問題点(馬鹿も馬鹿げた訴えを提起できるということ)について真剣に考えさせられる,優れた本である。
アメリカが抱える民事訴訟事情
熱いコーヒーを(どう考えても自己責任で)膝にこぼし、大やけどを負ったとしてマクドナルドを訴えたステラおばあちゃんにちなんで、本当にあった仰天裁判を紹介している。なんともはちゃめちゃな屁理屈で、数多くの人々が簡単に訴訟を起こしていることがわかる。
そこに群がるのは弁護士であり、一攫千金を狙う被害者集団でもある。一見まるで無関係と思われる人や企業を相手どって民事訴訟を起こす人々の心の中には「むしれるところからむしり取ろう。ダメもとなんだし」という意識が見え見えだ。
もちろん本書は仰天裁判をあげつらって笑っておしまい、という意図のもとに書かれたわけではない。こんな下らない、バカげた裁判に費やされる時間と公金、判決が下ったあとに原告に支払われる賠償金はまわりまわって普通の国民にはね返ってくる。医師は訴えられたときのために不必要な検査や治療をし、企業は訴訟にそなえて保険をかけて商品を値上げする。そして本当に裁判が必要とされる事例を滞らせて混乱させていることも大きな問題だ。
アメリカに「自己責任」という言葉はないのか?被害者意識を正義にすりかえてふりかざすことに何も感じないのか?誰もが簡単に訴訟を起こせるということは、ひるがえればいつどこで自分が訴えられるかわからないということなのだ。
嘘でしょう?と訴訟例を笑いつつもアメリカが抱える大きな問題を考えることができる。
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