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少年犯罪―統計からみたその実像

少年犯罪―統計からみたその実像
前田 雅英
少年犯罪―統計からみたその実像
定価: ¥ 1,890
販売価格: ¥ 1,890
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おすすめ度:
発売日: 2000-10
発売元: 東京大学出版会
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少年犯罪―統計からみたその虚像
『安全神話崩壊のパラドックス』の参考文献リスト中(p.314)で酷評されていたので読んでみた。抜粋↓
「前田は、一九七二年にシンナーが、毒物・劇物取締法に加えられたことにより、
シンナー遊びが虞犯少年ではなくなったために虞犯少年の数が激減したことを見落としている(鮎川潤『少年犯罪』平凡社新書。二三頁、参照)。
実は、これに限らず、そもそもこの書物は、犯罪統計の分析の初歩さえ踏まえていない低レベルのものである。
参考文献がひとつも掲載されていないこのような書物が、
学問書を装って東京大学出版会から刊行されたことに驚きを禁じえない。荒木伸怡は、「統計学の名著をも多数刊行している東京大学出版会が、
その刊行書籍の品質を問われかねない本であると考える」と指摘しているが同感である。 」

97年頃から、少年による強盗事件が急増したが、その年の6月に関口警察庁長官(当時)が
「悪質な非行には厳正に対処、補導を含む強い姿勢で挑む」と発言したこと。
8月には警察庁が「少年非行総合対策推進要綱」を制定し、少年事件に係る捜査力の強化を打ち出したことによって、
より重い罪名で検挙するようになったことを考慮していない。窃盗及び傷害→強盗

加害による死亡者数(他殺)が増加していないことについて著者は、「殺人だけを取り上げて治安が良くなっているというのは科学的でない」
というようなことを書いていたと思うが、ここは深く分析して欲しかった。
参考までに、近年の統計↓
警察白書(殺人)
平成14年:1,396件 平成15年:1,452件 平成16年:1,419件 平成17年:1,392 平成18年:1,309件

人口動態統計(他殺) 
平成14年:730人  平成15年:705人 平成16年:655人 平成17年:600人 平成18年:581人


色々と疑問の残る内容
日本は長らく、「安全な国」と言われてきた。しかし、気付いて見ると、日本の治安は悪化していた。特に、少年犯罪は機器的状況にある。統計を元に、それを考察した書。
というのが、本書の説明になるのだろうが、どうも私には疑問が残る内容であった。
まず、本書のデータの出典が明かではない、という点が問題である。序文で「公的な統計」とあるのだが、「公的な統計」にもさまざまある。一体、どこから出してきたのか? という点がまず疑問である。
次に、そのデータの扱い方について、である。著者は、近年、検挙率が低下したので補正する必要がある、ということで、本書に出ている統計でも補正された物が出されている。ただ、これは正しいことなのか? という疑問が残る。例えば、29頁で検挙方針の転換で、重大事件を中心にするようになった、とある。とすれば、事件の罪状ごとの検挙率を出す。また、補正した統計と、その前の統計を出す、といったことが必要ではないだろうか? 少なくとも、本書に載せられた統計だけでは、説得力に欠ける(例えば、殺人は検挙率が激減した状況下でも常に90%を上回っており、その状況の中、少年によるものの激増と言ったものはない)。
また、「凶悪化はウソだ」と言うものに反論した102頁からの章にも疑問だ。ここでも、統計を出して、凶悪化している、「統計の意図的操作などありえない」と続いているわけであるが、出された統計を見ると疑問を禁じえない。ここで出されたグラフが補正されたものでないとして考えると(補正した物ならば、余計に悪い)、全て96?98年の2年間程度で数倍にはねあがっているのである。2年間、つまり、全少年のわずか10分の1が入れ替わったのみでこのような変化をするというのは異常であり、考えられる事は2つである。1つは、著者が否定した「統計操作」などの結果であるということ。もう1つは、気にしなくて良いような誤差の範囲を大げさに示しているか、である(数値が3倍になった、としても、10%が30%になるのと、0、01%が、0、03%になるのでは全く意味が異なるはずだ)。
本書では、その序盤から「キレる少年」であるとか、「動機のわからない犯罪」と言った言葉が並ぶ。しかし、犯罪史を紐解けば、そのような犯罪は戦前より数多く見うけられる。また、犯罪凶悪化の原因は「バーチャル」やら「インスタント食品」と言った学問的解答が提示されている、と言うがそれらが支配的などということも無い。
それらも含めて、疑問の残る内容である。

『統計でウソをつく法』の実例
まず,「少年犯罪の凶悪化」というのが,特に発生件数からみれば,事実として間違っているというのは,もはやよく知られているところである。もちろん,「質の変化」についてはそれぞれの見解が分かれるところである。ところが本書は,客観的なデータを使用しているように装いながら,実際は都合のいいようにねじ曲げた図表を多用することによって,「少年犯罪の凶悪化」という自己の主張を強弁しているにすぎない。検挙率の補正,一部を拡大したうえに数字が明記されていないグラフの多用,独善的なデータの解釈など,典型的な『統計でウソをつく法』の実例である。こういう学者を曲学阿世の徒というのだろう。なお,少年犯罪について中立的に記述したものとしては,『議論のウソ』『殺人率』『反社会学講座』『少年の「罪と罰」論』など数多くあるので,それらと本書を読み比べてみるのも面白いだろう。とりわけ『少年の「罪と罰」論』は,少年犯罪について私が読んだ本の中では最も良かった(本書についてもかなり詳しく検討を加えている)。

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